1941年に、葉酸はほうれん草から発見された栄養素で、水溶性ビタミンB群の1種であり「ビタミンM」とも呼ばれています。
この葉酸は、体の中でたんぱく質をつくるときや細胞を作るとき、遺伝子の情報を保存し支持をだす「DNA」や「RNA」などの核酸を合成する際に働きかけます。
今回は、妊娠したい人の体に、葉酸がどんな効果があるのかまとめました!
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葉酸には、精子の異常を予防する効果が期待できる!
野菜から葉酸をたっぷり摂取させた男性と、葉酸を不足がちにさせた男性の精子を比べた実験が、アメリカ合衆国カリフォルニア大学の研究者らによっておこなわれました。
その結果、野菜から葉酸を十分に摂取した男性は、染色体異常の精子が少ないという結果が報告されています。
葉酸には、子宮頚ガンを予防する効果が期待できる!
葉酸は子宮頸がんと深い関わりがあり、葉酸が欠乏することで、子宮頸がんの発症リスクが上がると研究によって証明されています。
葉酸には、細胞に働きかけて正常に保つ役割があります。そのため、子宮頚部異形成(子宮頸がんの前段階)の、がんの原因となる細胞の変異を防ぐ効果が期待できます。
葉酸には、着床率を上げる効果が期待できる!
葉酸には、細胞分裂を助ける作用があるため、子宮の細胞に働きかけて子宮内膜を強化する効果があります。また、骨髄の細胞分裂を促し、血流がよくなるように働きかけます。
受精卵は血液から栄養や酸素を取り入れて成長するため、血流が促されることにより、着床率を高めることができるのです。
葉酸には、貧血を改善する効果が期待できる!
一般的な貧血は鉄の不足で起こるといわれていますが、巨赤芽球性貧血は、葉酸とビタミンB12の不足で起こります。
鉄や葉酸、ビタミンなどには、赤血球を作ったり酸素を体内へ運んだりする働きがあり、子宮内環境に影響を与えます。子宮の粘膜を作るときに必要になる栄養素が不足すると、受精卵が着床しやすいベッドを作ることができません。
葉酸やビタミン、鉄を摂取することで、貧血を改善する効果がありますので、妊娠しやすい子宮内環境を作ることができます。
妊活中や妊婦さんに特に葉酸をおすすめするわけは、人の体を作るときに重要である、細胞の生産や分裂、DNA形成に、葉酸が働きかけるからです。
妊娠初期は、赤ちゃんの中枢神経や各臓器などが形成される時期で、これから生きていくために人の体に成長していく段階です。
この妊娠初期の脳や心臓、血管、そして目や耳や鼻など、体の各器官の形成が行なわれるときに、葉酸が欠乏することで赤ちゃんの成長に悪影響を与えるのです。
葉酸が欠乏することで、神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります。神経管閉鎖障害とは、妊娠4週~12週頃の初期に、胎児の脳や脊椎の神経管(脳や脊椎)の形成がうまく行われない先天性異常の1つです。
1998年の日本の調査では、産まれた赤ちゃん(死産も含む)1万人に対して、約6人が神経管閉鎖障害であり、そのうちの約3.2人が二分脊椎の障害と報告されています。
アメリカでは、この先天異常を防ぐために、シリアルやパンに葉酸を添加するよう義務付けたことにより、神経管欠損症の発症率が低下したという結果がでたようです。
神経菅閉鎖障害の原因は、葉酸不足だけでなく遺伝などさまざまで、葉酸を摂取したからといって絶対に予防できるわけではありませんが、少しでもリスクを低減すために、日本では、厚生労働省が妊娠したい人達に、日頃から葉酸を1日0.4㎎摂取するよう推奨しています。
神経管閉鎖障害の1つで、胎児がお腹の中で脊椎骨を形成するとき、脊椎の管の中になくてはいけない脊髄が、外に出て傷ついたりすることで起こるものです。
赤ちゃんに与える影響は、下肢(股関節より指先まで)の運動障害や麻痺、膀胱や直腸の機能障害がおこることがあります。
神経管閉鎖障害の1つで、胎児の脳や脊髄が形成されるときに障害がおこり、脳の一部や大部分が形成されず、頭部がほどんどつくられないため、発症した胎児の75%が死産となります。
赤ちゃんが産まれてきたとしても、生後一週間以上生きていくことは難しいといわれています。
今は、妊娠中に判断ができますが、「無脳症」と診断された場合、人口妊娠中絶の手術が行われることが多いようです。
葉酸が不足すると、うつ病や心筋梗塞、認知症などの病気を引き起こすため、普段から葉酸の摂取を心がけたいですが、特に、妊娠初期の胎児が細胞分裂をして、人間の体に成長していく過程で、葉酸が必要となります。
葉酸が欠乏することで起きる胎児の先天異常は、妊娠初期~妊娠10週以内に発症するといわれていますから、妊娠したい!赤ちゃんが欲しい!と希望している人は、いつ妊娠してもいいように、妊活中から食事やサプリで葉酸を摂取するよう心がけることが大切です。
妊娠したいと思っている人や可能性のある女性は、1日あたり400μgの葉酸を摂取するようにしましょう。
野菜類100gあたり(μg)
エダマメ(260)モロヘイヤ(250)パセリ(220)菜の花(190)グリーンアスパラ(180)ブロッコリー(120)ホウレン草(110)春菊(100)グリンピース(99)切干大根:乾燥(99)かいわれ(96)
肉類100gあたり(μg)
鶏のレバー肝臓(1300)牛のレバー肝臓(1000)豚のレバー肝臓(810)フォアグラ(220)卵の卵黄(140)ウズラ卵:生(91)ウズラ卵:水煮(47)鶏のはつ:心臓(43)卵:生(43)
魚介類100gあたり(μg)
たたみいわし(300)うに(360)すじこ(160)いくら(100)あんこう:きも(88)ホタテ(87)イカナゴ:佃煮(85)たらこ(50)はまぐり:佃煮(49)干しエビ(46)明太子(43)牡蠣(40)
その他の食品100gあたり(μg)
ライイースト(3800)焼のり(1900)味付けのり(1600)抹茶(1200)あおのり:乾燥(260)昆布:乾燥(170)きなこ(250)干ししいたけ(240)大豆:乾燥(230)ごま(150)ライチ(100)くるみ(91)納豆(120)デニッシュパン(61)カマンベールチーズ(47)
食事だけで葉酸を摂取するのは難しいといわれますが、葉酸を多く含む食品を意識して料理するとよいでしょう。また、葉酸は熱に弱いため、野菜などはサラダにして生で食べたり、溶けでた葉酸も摂取できるようにスープにしたりして、調理法を工夫するようにしましょう。
厚生労働省は、妊娠したい妊活中の方や妊婦さんに、食事だけで補えない葉酸をサプリメントからも摂取するようすすめていますが、サプリメントで補うときには注意が必要です。
サプリメントには、葉酸の他にも食品添加物が含まれていますので、特に妊娠中は摂取に気を付ける必要があるのです。
葉酸サプリメントに含まれる添加物の中には、「ショ糖脂肪酸エステル」という成分があります。これは、胎児へ染色体の異常を引き起こす原因でもあるといわれており、身近な食品でもあるパンやお菓子の中にも、使用されています。
「ショ糖脂肪酸エステル」は、一般的には安全なものとして使用されていますが、発ガン性や肝臓肥大を引き起こす原因にもなるという報告もありますから、胎児への影響は低いとしても、妊娠中はできるだけ無添加の安全なものを選んでくださいね。
サプリメントは簡単に栄養の補助ができるため、利用しやすいものといえますが、説明書にかかれている摂取量をきちんと守るように注意しましょう。葉酸サプリメントを過剰摂取することで、体に現れる副作用には下記のような症状があります。
葉酸サプリメントを選ぶときは、まず安全で安心なものであるか確認をして、摂取量を必ず守り飲むようにしましょう。
葉酸の摂取を推奨しているのは、妊娠前から授乳期が終わるまでの期間が目安ですが、サプリメントで補う場合は注意が必要です。
妊娠後期に入ってからも、ずっと葉酸サプリメントを摂取し続けた場合、産まれてきた子供は、喘息を発症するリスクが約30%高くなることが、オーストラリアのアデレード大学の調査によってわかりました。
葉酸を食品から摂取した場合と、妊娠前から葉酸サプリメントを摂取し、妊娠中期までにサプリの服用をやめた女性の子供には、喘息のリスクが高まることはなかったようです。
このように葉酸は、妊娠したい方にも効果があるといわれています。それに妊活中は、いつ妊娠するかわからないので、赤ちゃんがいつできてもいいように、葉酸を今から十分摂取するようにしてくださいね。
葉酸を多く含む食品を使って料理をしたり、サプリメントで補ったり、妊娠したいと思ったときから、葉酸を意識した食事をするようにしましょう。